連結業績

2022年度は非定期修理年度であり、概ね安定稼働を維持することが出来ました。特に上期につきましては、稼働に影響を与えるような目立ったトラブルは無く、大規模定期修理を実施した前期と比較しまして、原油処理量、販売数量ともに大幅に増加しました。一方で下期につきましては、一部の装置において計画外で補修を行ったことから一時的に稼働率が低下したタイミングもございましたが、ほぼ90パーセントの稼働率を維持いたしました。

損益につきましては、原油価格が2022年度期末にかけて下落基調を強めたことにより在庫影響が6億円と、前期に比して原価押し下げ効果が大幅に縮小したこと等から、親会社株主に帰属する当期純利益においては前期比116億円減益となる35億円となりました。

今後の事業展開

当社は2021年5月に、2021~2024年度の4年間を対象とする第三次中期事業計画を策定しております。

その後、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた社会的要請が更なる高まりを見せているだけでなく、ウクライナ情勢を背景とした地政学的リスクの高まりや、資源価格・為替相場の大きな変動を踏まえたエネルギー安全保障の観点からも、これまでの化石燃料を中心としたエネルギー需給構造の転換が進展していくことが見込まれます。こうした中においても、収益の安定的拡大と環境負荷低減の両立を図るべく、(1)石油精製事業の更なる基盤強化、(2)脱炭素社会に向けた取組み強化を基本方針とし、引き続き以下の課題に注力してまいります。

 

(1)石油精製事業の更なる基盤強化

 

①稼働信頼性の強化

ドローンによる点検やIoT、AⅠ等のデジタル技術を最大限活用することにより、装置に係る運転管理・保全の一層の高度化を推進してまいります。

 

②コスト競争力の強化、競争優位の確立

更なる精製コストの削減、エネルギー効率の改善、原料調達を含む生産最適化、高付加価値製品の増産に向けた設備改良、本社コストを含めた総経費の合理化等を進めコスト競争力を更に強化してまいります。

また、長足に進展するデジタル技術の最大限の導入・活用を更に図るとともに、業務フローの抜本的見直しと必要な組織の再編、2019年度に刷新した新人事制度の最適運用、人財育成の取組み強化等により競争優位の土台となる人財・組織面での一層の変革を図ります。

 

(2)脱炭素社会に向けた取組強化

 

①製油所の徹底した環境負荷低減

省エネルギーは収益性の改善と同時に製油所のCO2排出量の低減に最も確実に寄与することから、従来の取組みを一層深化・加速させ、製油所の低炭素化を推進してまいります。

また、バイオETBEを配合したガソリンの供給といった従来の取組みに加え、アンモニアのボイラー燃料としての使用検討等、環境負荷に配慮した製品の供給や燃料の使用にも取り組んでまいります。

当期においては、袖ケ浦製油所のメインボイラー(ASP-BTG)において、石油精製の過程で副生されるアンモニアのアスファルトピッチとの混焼実験を実施し、将来的な混焼率の引き上げも見据えて各種データの収集・解析を行いました。また、2023年4月には、第三者認証機関からの認証を受けた「低炭素アンモニア」をサウジアラビアより受け入れ、同ボイラーにて発電用燃料として使用しました。

 

②脱炭素ビジネスの追求

我が国政府の目標である2050年カーボンニュートラルを踏まえ、現在研究開発を進めている次世代バイオ燃料については2020年代半ばの供給開始を目指すほか、CO2フリー水素、合成燃料など当社の既存インフラ・知見が活用できる脱炭素技術については、先ずは様々なステークホルダーとの連携を通じて積極的に追求していくことで脱炭素社会への貢献を果たしてまいります。

当期においては、国土交通省航空局が進める『輸入ニートSAFモデル実証事業』に伊藤忠商事株式会社と協力して参画しました。同事業では、伊藤忠商事株式会社がNeste OYJ社より国内で初めてニートSAFを輸入し、当社は袖ケ浦製油所の設備で輸入ニートSAFをジェット燃料と混合しSAFを製造し、中部国際空港へのSAFの出荷を行いました。当社より出荷されたSAFは中部国際空港に搬入され、既に国土交通省航空局が所有する飛行検査機 への供給が開始されております。

また、当社事業から排出される温室効果ガス(GHG)に加え、当社が供給する石油製品等の消費段階で排出されるGHGの排出量算定に向けた取組みにも着手したほか、2022年12月には、経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」への賛同を表明しました。

 

当社は今後も立地優位性と高い重質油処理能力を誇る袖ケ浦製油所を拠点に、エネルギーの安定供給という社会的使命を果たし続けるとともに、第三次中期事業計画を指針として脱炭素ビジネスなどの新規事業育成にも注力し、企業価値の向上に努めてまいります。

株主還元

当社は株主各位への利益還元を重要な経営課題のひとつと考えており、中・長期的な事業発展のための内部留保の充実に留意しつつ、業績及び資金バランス等を勘案の上、安定的な配当の継続に努めることをグループ経営方針にも掲げております。

当期におきましては、3期連続の黒字決算となったことに加え、在庫影響を取り除いた実質ベースの損益でも4期ぶりの黒字決算となりました。その一方で、財務体質については未だ改善途上にあること等も含めて総合的に勘案し、2023年3月期の期末配当については、2022年3月期と同額の1株当たり10円とさせていただきます。また、次期の配当につきましては、1株当たり10円を予定しております。

株主・投資家のみなさまにおかれましては、引き続き当社事業へのご理解と、今後の事業発展に向けた長期的なご支援、ご鞭撻を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

 

2023年6月
富士石油株式会社

代表取締役社長 社長執行役員